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ドイツはAI計算能力4倍、中国はデータ国有企業設立 競争の焦点は土台づくりへ

ドイツはAI計算能力4倍、中国はデータ国有企業設立 競争の焦点は土台づくりへ

ドイツのメルツ首相は20日、ベルリンで開かれた投資家向けイベントで演説し、防衛や半導体、人工知能(AI)などに重点投資していると表明しました。

2030年までにAIの計算能力を4倍に引き上げる目標も示しています。同じ20日、中国ではAI分野の発展支援を掲げるデータ関連の国有企業「国家数据集団」が設立されたと国営の新華社通信が報じました。

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AIを動かす「土台」に目を向けたドイツ

AIの話題といえば、対話型サービスの賢さやモデルの新バージョンに目が向きがちです。ところがメルツ首相が演説で掲げたのは、そうした華やかな成果物ではなく、AIを動かすための計算能力でした。2030年までに4倍にするという数字です。

計算能力とは、AIの学習や運用に必要な処理を支えるコンピューターの力のこと。道路や電力網のように、普段は見えにくいものの、産業全体の速度を左右します。モデルを作る企業だけでなく、製造業や医療、行政がAIを使う場面でも、土台が細ければ活用は頭打ちになります。首相の発言は、AIを一部のIT企業の話ではなく、国の産業競争力の基盤として扱う姿勢の表れと読めます。

首相は、長期的な生産性と経済的な自立性を高めるために、防衛や半導体、AIなどへ重点的に投資していると説明しました。AIの計算能力の目標は、その広い取り組みの一部という位置づけです。

AIだけでは終わらない投資誘致の全体像

演説の相手は投資家でした。首相は「皆さんにとって最善の事業環境を整えることが目標だ」と述べ、欧州最大の経済国であるドイツへの投資を呼びかけています。会場にはエネルギー企業のバルカン・エナジーや防衛企業のヘルシングなどの代表者が出席しました。顔ぶれを見ても、AI単体の売り込みというより、エネルギーや防衛を含む産業政策の見本市に近い空気だったのかもしれません。

首相は成長の加速や海外からの直接投資の増加、スタートアップ設立の増加を挙げ、政策の効果がすでに経済に表れているとも語りました。さらに、ドイツ企業が2028年までに8000億ユーロ超を投資すると約束した「メード・フォー・ジャーマニー」構想を紹介しています。

欧州の経済統合にも触れ、進めば企業がEUの単一市場を活用しやすくなると指摘しました。欧州共通の企業制度「EU Inc.」についても、できるだけ早く導入すると約束しています。国内向けの投資だけでなく、欧州全体を一つの市場として使える環境づくりを同時に訴えた格好です。

規制は競争力を支えるのか

もう一つ注目したいのが、AI規制をめぐる発言です。首相は、AI規制が実現する前に道を閉ざすのではなく、道を開くものとなるよう、欧州レベルで関与していると語りました。

これは規制を緩和すると決めたという意味ではありません。規制をどう設計するかについての方針表明です。欧州はAIのルール作りで先行してきた地域だけに、ルールそのものを競争力の一部と捉える視点が垣間見えます。投資家にとっては、予見しやすいルールがあるかどうかも、巨額の資金を投じる判断材料になるはずです。

中国は国有企業でデータを束ねる

同じ20日、中国では別の動きがありました。新華社は、データ関連事業を担う国有企業の国家数据集団が設立されたと報じています。データ資源を活用してAI分野の発展を支援することなどが目的で、本社は習近平国家主席の肝いりで建設された雄安新区(河北省)に置かれます。

設立大会に出席した丁薛祥筆頭副首相は、AIで先行する機会を捉え、国家の新たな競争優位性を築くうえで重要な意義があると述べました。中国ではAIモデルの開発をディープシークやアリババグループといった民営企業が手がけており、国有企業はデータという別の側面から支える役割を担うことになります。

並べてみると見える政策の形

両国の動きを比べると、AIを支える手段の違いが浮かびます。ドイツは計算能力の拡大目標を掲げたうえで、投資家に事業環境の整備を約束し、規制の設計にも関与する構えです。中国は、データを扱う国有企業という組織を新たに立ち上げました。

AIの競争力を左右する要素は、計算能力、データ、ルール、資金と複数あります。ドイツは計算基盤と投資環境を前面に出し、中国はデータの面から組織を整えました。どちらが優れているかを論じる材料は、この2つの発表だけでは足りません。ただ、AIをめぐる国家間の競争が、モデルの性能比べから、土台や仕組みづくりの勝負に広がっている様子は読み取れます。

私たちが日々使うAIサービスの裏側では、こうした国レベルの設計が静かに進んでいます。計算能力、データ、ルールのどこに国が手を入れるのか。次に各国の発表を見るときは、その視点で眺めてみると、ニュースの輪郭がはっきりしてくるでしょう。

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