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Spotify、AIエージェントを音楽配信の新たな入り口に 聴取データと選曲は自社で管理

Spotify、AIエージェントを音楽配信の新たな入り口に 聴取データと選曲は自社で管理

スウェーデンの音楽配信大手Spotifyは22日、第3四半期の決算を発表しました。月間アクティブユーザー数(MAU)は7億8800万人、売上高は約49億7000万ユーロ(約5億円ではなく約50億ユーロ規模)に達しています。

決算説明では、ChatGPTなどのAIエージェント経由で音楽やポッドキャストが聴かれる未来像が語られ、第4四半期の営業利益は8億2000万ユーロを見込むと示されました。

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探して選ぶ手間を、AIに預ける時代

ランニングのペースに合う曲を流してほしい。最近AIと話していた話題に近いポッドキャストを聴きたい。前回の続きから要点だけ振り返れるオーディオブックがあれば助かる。こうした頼み事を、アプリを開かずにAIアシスタントへ話しかけるだけで済ませる。Spotifyが描いているのは、そんな使い方です。

従来は、アプリを開いてアーティストを検索し、プレイリストを自分で組み立てるのが定番でした。その入り口が、会話の中に移っていく可能性があります。Spotifyはこの変化を脅威ではなく追い風と捉え、どのAIエージェントからでも使われるメディアサービスになることを目標に掲げています。

共同CEOのグスタフ・セーデルストローム氏は、投資家向けの説明で「エージェントは人が避けたい雑用を肩代わりするのが得意だが、娯楽はその逆だ」という趣旨の説明をしました。曲を要約してほしい人はいない、というわけです。確かに、音楽は面倒だから任せるものではなく、聴いて楽しむこと自体が目的です。AIが手間だけを引き受けてくれるなら、聴く時間はむしろ増えるかもしれません。

外部のAIと手を組むSpotifyの選択

Spotifyは、MetaのAIアシスタント「Muse」と連携した最初の音楽サービスだとされています。ChatGPTやClaudeとの連携も用意されています。他社がAIエージェントへの対応を決めかねたり、距離を置いたりするなか、自社は積極的に飛び込んで成長に乗る、というのがセーデルストローム氏の姿勢です。

門を閉ざす企業もある

エージェントの扱いをめぐっては、立場の違いも表面化しています。たとえばAmazonは、MetaのMuseが自社のプラットフォームで買い物をすることをブロックしました。アクセスの管理、セキュリティ、プライバシー、商業的な主導権といった論点があるとき、大手が外部エージェントを締め出す場面は今後も出てきそうです。

物販は、AIが代わりに買うことで広告や自社アプリの導線を迂回されかねない分野です。一方で音楽は、どの入り口から聴かれても再生という価値は変わりません。Spotifyが門戸を開く側に回りやすいのは、この違いもありそうです。

聴取履歴が生む、自分だけの選曲

Spotifyが強調するもう一つの軸は、AIを通じて体験をより個人向けにすることです。同社は現在のサービスを、アプリ内でも他のエージェント経由でも使える「エージェントとして包み込まれた知的なメディアサービス」と位置づけています。クリックするだけでなく、話しかけ、質問し、指示できる存在になったという説明です。

具体例も挙がっています。2008年までさかのぼって聴取履歴を1曲ずつ見直し、本当のお気に入りを選ぶ。テンポを速めたり遅めたりして調整する。キーとBPMで並べ替える。最後に走る人の歩調に合わせて混ぜ合わせ、理想のランニング用プレイリストに仕上げる。ここまで細かい依頼をこなせる点は、他のメディアサービスにはない強みだとしています。

土台になるのは、長年蓄積された再生、スキップ、新しい曲との出会いといった履歴です。好みを知らない汎用AIが作る無難なリストより、本人らしい提案がしやすくなります。

データは渡さず、選曲は自社で行う

気になるのは、AIエージェントに個人の聴取データが流れてしまわないかという点でしょう。セーデルストローム氏は、聴取データをパートナーへ送ることはしないと明言しています。エージェントはSpotifyに依頼を伝え、受け取ったSpotify側が自社のシステムで内容を判断し、何を再生するかを決める仕組みです。

入り口は外部のAIに広がっても、選曲の頭脳と蓄積データは自社に残る構図です。便利さを広げながら、サービスの主導権は手放さない。この設計が、AI時代の配信サービスにとっての生命線になりそうです。

AI投資は利益に結び付くのか

気になるのは、こうしたAI戦略が数字にどう表れるかです。Spotifyは第4四半期の営業利益を8億2000万ユーロと見込み、アナリスト予想の8億1340万ユーロを上回る水準を示しました。ホリデーシーズンにはAI機能を背景にユーザー数が伸びるとみているとのことで、同社の株価はプレマーケット取引で3%以上上昇しました。

Spotifyはすでに、音声コメント付きで個人向けの音楽ミックスを流す「AI DJ」や、気分や好みを文章で伝えると選曲してくれるプロンプトベースのプレイリストを提供しています。AIへの投資が続くなか、市場の目は収益性に向いています。

予想と見通しを並べて見る

第3四半期の営業利益は6億7200万ユーロで、アナリスト予想の6億7180万ユーロとほぼ一致しました。売上高は49億7000万ユーロで、予想の49億8000万ユーロをわずかに下回っています。つまり第3四半期は、数字だけ見れば予想通りの着地でした。

第4四半期の見通しは、項目ごとに表情が分かれます。MAUは8億1800万人の見込みで、市場予想の8億1900万人を100万人未満の差でわずかに下回りました。一方、プレミアム加入者数は1000万人増えて3億1600万人に達する見通しで、予想の3億1470万人を上回っています。無料ユーザーの数より、お金を払って聴く人の増加が目立つ内容です。

Spotifyは、成長が持続的に加速する強固なビジネスを築いており、今後もさらなる成長の余地があると述べています。AIエージェントが音楽の入り口を担うようになれば、アプリを開く回数は減るかもしれません。それでも、聴く人の好みを最もよく知るサービスが選ばれ続けるなら、有料加入者の増加という形で成果が表れるはずです。

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